「すばらしき世界よ、永遠なれ」
多元性に満ちた世界を「保守」する。
さだまさし「不良少女白書」
人には黒く見えるカラスが自分には白く見えてしまう。
黒くみようと努力したのに、人は大声で聞いてくる。
なぜ嫌いですか、なぜ好きですか。
左ですか、右ですか。
「あれか、これか」「白か、黒か」「右か、左か」と問いつめる二元性の向こう側に本来広がっているのは、
ルイ・アームストロング「このすばらしき世界」
I see trees of green, red roses too
私は見る、緑の木々を、赤いバラも。
I see them bloom, for me and you
君や私のために花開くのを。
And I think to myself, what a wonderful world
そして私は心に思う、なんてすばらしい世界なんだろうと。
I see skies of blue, and clouds of white
私は見る、青い空と白い雲を。
The bright blessed day, the dark sacred night
明るい祝福された昼と、暗い聖なる夜を。
And I think to myself, what a wonderful world
そして、私は心に思う。なんてすばらしい世界なんだろうと。
The colors of the rainbow, so pretty in the sky
虹の色彩が、美しく空にかかる。
Are also on the faces, of people going by
ゆきかう人々の顔の上にも。
I see friends shaking hands, sayin' "how do you do?"
私は見る、友人たちが握手をして「はじめまして」と言葉をかわすのを。
They're really sayin' "I love you"
本当は「あなたを愛している」と言っているのだ。
I hear babies cryin', I watch them grow
私は聞く、赤ん坊が泣くのを。私は見る、彼らが育つのを。
They'll learn much more, than I'll ever know
彼らは私が知るより多くのことを学ぶだろう。
And I think to myself, what a wonderful world
そして、私は心に思う、なんてすばらしい世界なんだろうと。
Yes I think to myself, what a wonderful world
そうだ、私は心に思う。なんてすばらしい世界なんだろうと。
緑の木々や、赤いバラや、赤ん坊の泣き声や、青空や雲や虹など、多元性に満ちた「すばらしき世界」です。
私たちが二元性を離れて、世界の多元性に気づくのは、あれかこれかと「聞く」のをやめて、木々の緑を、深紅のバラを、青空や雲や虹を、「見る」時です。
国境や国籍を取り払い世界を一様化しようとするグローバリズムに対抗して、国家の枠組みを守ろうとするとき、私たちは、同時に、多元性に満ちた世界を守ろうと戦っていることになります。グローバルスタンダードによって規格化され、画一化される世界ではなく、諸民族の文化が豊かに花開く世界です。
つまり、
「すばらしき日本よ、永遠なれ」という私たちの願いは、
「すばらしき世界よ、永遠なれ」という願いと表裏一体のものです。
多元性に満ちた世界とは、「すばらしき世界」に他ならないからです。
ならば、「すばらしき日本よ、永遠なれ」という願いは、一国の存続と発展を願うのみならず、同時に、世界の諸民族や諸文化を入れる容器としての諸国家の安寧を願う願いと表裏一体でなくてはなりません。
グローバリズムを推進する勢力は、牧羊犬が羊の群れを吠え立てるように、二項対立によって人々を煽り立てて、グローバリズムの冊の中に囲い込もうとします。
二項対立の「二」に煽られて片側の陣営に傾斜する、その先に待ち受けるのは、すべてが一様化された「一」なる世界です。
資本主義にせよ、共産主義にせよ、一つのイデオロギー、一つの価値観、一つの制度によって世界を画一化しようとします。
二項対立の罠に絡めとられないためには、私たちは、多元性に満ちた「すばらしき世界」に留まらなくてはなりません。
多元性に満ちた「すばらしき世界」に留まるためには、日本が日本としてあり続ける、「すばらしき日本」を守り抜いていかなくてはなりません。
差異に満ちた「多」元的な世界を保持しようとする戦いは、具体的には、私たちが置かれている「一」つの国家の枠組みを守ろうとする戦いを通して戦われます。
対立しあう「二」つの陣営の片方を「保守」し、他方を卑しめ切り捨てるのが、本当の意味の「保守」なのではなく、
「多」なる世界の「一」つの要素を大切に守り育むこと、その「一」を守ることを通して「多」なる世界を守ること、そのことこそが、「保守」という言葉の本当の意味でなくてはなりません。
そのためには、世界の一端で対立しあう二項に注視するのをやめて、その二項も併せ呑む多元的な世界を、巨視的に俯瞰する視点を身につける必要があります。
世界の万物に神性を認め、八百万の神をあがめてきた日本人であれば、そのことはきっとたやすいはずです。
日本人が生きるべき場所は、八百万の神が息づく「多」元的な世界であり、右と左に「二」分化された世界や、すべてが「一」様化された世界ではないからです。
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