彼らの洗脳手法: ダブルバインド

矛盾したメッセージを同時に提示されるとき、人は思考停止に陥る。
※この記事は、旧ブログの記事「彼ら」の洗脳手法(1): ダブルバインド(二重拘束)(2013年3月1日)の再掲です。

心理学にダブルバインドという言葉があります。

「二重拘束」とも訳されます。

分かりやすく言うと「板ばさみ」です。

矛盾する二つのメッセージを同時に提示し、かつ、その矛盾から逃れられない状況を作り、相手の心を縛るというもので、カルト宗教の洗脳でもよく使われる方法です。

私はずっと、安倍晋三や、チャンネル桜、西田昌司氏、三橋貴明氏らに共通して、ある強い違和感を感じてきました。

それは彼らが、矛盾したことを同時に語るという共通点をもっているからです。

例えば、彼らは、次のように、矛盾したメッセージを同時に発してきました。

A. 新自由主義はよくない。
B. (新自由主義者である)安倍晋三を支持すべきである。
C. 安倍晋三以外に政権をゆだねられる政治家は存在しない。

上のAとBは、正反対の矛盾したメッセージです。これにCが加わることで、この矛盾した状況から逃げられない状況が作られ、人は一種の判断停止、思考停止の状態に陥ります。

上の例でいうと「新自由主義者である安倍晋三を支持すべきである」と単一のメッセージを発する場合よりはるかに効果的に、安倍晋三という人物への熱狂的で強固な支持に、人々を誘導することができます。

いわゆる「ツンデレ」もダブルバインドの一種であり、異性の気持ちを引きつけコントロールする効果的な方法として知られています。

「好き」というメッセージと「嫌い」という矛盾したメッセージを同時に発することは、単に「好き」という単一のメッセージを発する場合より、強く相手の気持ちをしばることができます。

この話法が語り口の中に顕著に現れているのが、水島総なのですが、次の動画を注意してお聞きになれば、彼が同じ番組の中でダブルバインド的な矛盾したメッセージを繰り返し発していることがわかります。



上の動画の中で、次の三組のダブルバインドのメッセージを私たちは聞き取ることができます。

A. TPPは日本の国を破壊するものである。
B. 安倍晋三はTPPに参加するかもしれない。
C. 安倍晋三以外に政権をゆだねられる政治家は存在しない。

A. グローバリズムに楽観的な戦後保守はよくない。
B. 安倍はTPPに参加するかもしれない。(=安倍はグローバリズムに楽観的な戦後保守である。)
C. 安倍晋三以外に政権をゆだねられる政治家は存在しない。

A. アメリカは中国や北朝鮮をカードに使って対米従属を日本に促すので警戒が必要だ。
B. 日中関係が緊迫化しているので日米同盟を強化しなくてはならない。
C. 安倍晋三以外に政権をゆだねられる政治家は存在しない。

下の動画でもかなり分かりやすいダブルバインド的なメッセージを発しています。



A. 対米自立を遂げなくてはならない。
B. 日米同盟を強化しなくてはならない(TPPもやむをえない)。
C. 日中関係が緊迫化している。

実は安倍晋三自身も、しばしば矛盾したメッセージを同時に発したり、矛盾した政策を同時に掲げたりしているのがわかります。

例えば、『新しい国へ 美しい国へ 完全版』の中で安倍晋三氏は、次のように述べています。

「瑞穂の国の資本主義」

特に総理を辞めてからの五年間、公園やミニ集会などで地方の窮状を実感する機会が数多くありました。例えば私の地元である山陰地方の場合、新幹線もなければ高速道路もない。人件費は東京に比べれば安いですが、中国やミャンマーなどに比べれば高い。つまり企業を誘致しようにも来てくれないのです。

しかしながら、日中関係が不安定な中で、日本の地方に眠る質の高い労働力に注目が集まりつつあります。交通や道路などのインフラを整備し、国内におけるヒト・モノ・カネの移動の速度を上げることで、こうした国内資産を活用できるはずです。

あるいは、私の地元や九州の場合、地理的な距離でいえば、東京よりも中国の都市の方が近い。場合によっては日本の高品質な農産物の中国への輸出、労働力の交流も直接行った方が双方に利益があるかもしれません。

は長期的には、東京一極集中を解消して道州制を導入すべきだろうと考えています。日本を十ぐらいのブロックに分けて、そこに中央政府から人を移して、州政府のようなものをつくり、その下に基礎自治体が有るイメージです。そうすることで、いちいち中央を通さなくても、各州が独自の判断でスピーディに動くことができる。東京だけでなく、日本全体が活力を取り戻さない限り、日本の再生はありえないと私は考えています。

日本という国は古来、朝早く起きて、汗を流して田畑を耕し、水を分かち合いながら、秋になれば天皇家を中心に五穀豊穣を祈ってきた、「瑞穂の国」であります。

自立自助を基本とし、不幸にして誰かが病に倒れれば、村の人たちみんなでこれを助ける。これが日本古来の社会保障であり、日本人のDNAに組み込まれているものです。

私は瑞穂の国には、瑞穂の国にふさわしい資本主義があるのだろうと思っています。自由な競争と開かれた経済を重視しつつ、しかし、ウォール街から世間を席巻した、強欲を原動力とするような資本主義ではなく、道義を重んじ、真の豊かさを知る、瑞穂の国には、瑞穂の国にふさわしい市場主義の形があります。

安倍家のルーツは長門市、かつての油谷町です。そこには棚田があります。日本海に面していて、水を張っているときは、ひとつひとつの棚田に月が映り、遠くの漁火が映り、それは息をのむほど美しい。

棚田は労働生産性も低く、経済合理性からすればナンセンスかもしれません。しかしこの美しい棚田があってこそ、私の故郷なのです。そして、その田園風景があってこそ、麗しい日本ではないかと思います。

市場主義の中で、伝統、文化、地域が重んじられる、瑞穂の国にふさわしい経済の有り方を考えていきたいと思います。

上の文章の中で、

A. 瑞穂の国の資本主義が守られなければならない。
B. (実際には瑞穂の国の資本主義を破壊してしまう)道州制を推進すべきである。

と矛盾したメッセージが同時に記されているのがお解りになると思います。

他にも例はたくさんあります。

A. 日本を取り戻す。
B. (実際には)日本を売り渡す。

A. 戦後レジームからの脱却
B. (実際には)対米隷属の徹底

A.デフレからの脱却をめざす政策: アベノミクス(第一の矢・第二の矢)
B. デフレを促進する政策: アベノミクス(第三の矢)・消費税増税

矛盾した二つのメッセージ。

矛盾した二つの政策。

離脱できない追いつめられた状況の中で、それを同時に並べられる時、人は判断を見失い、一種の思考停止に陥らざるを得なくなる。

そして洗脳された状態に陥る。

このように、彼らが共通したやり方を執拗に反復しているのは、たまたま偶然のことなのでしょうか。

それとも、何か理由があるのでしょうか。

普通の健全な人間は、このような矛盾したことを同時に語ったりはあまりしないはずなのですが・・・

「ツンデレ」のように、誰かの気持ちを強くしばりつけたいという特殊な意図を持たないかぎりは。

ちなみに、皆さんも御存知のとおり、WJFプロジェクトは、このようなダブルバインド的なメッセージを発したことはありません。WJFプロジェクトが掲げるメッセージは「すばらしき日本よ、永遠なれ」という単一のメッセージただひとつです。人々を洗脳することが目的ではなく、人々を思い込みから解き放ち、事実をきちんと検証して通説を覆し、自分の頭で考えることをお一人お一人に取り戻してもらうことが当プロジェクトの目的だからです。

(追記)ジョージ・オーウェルが1949年に出版した未来小説『1984』に「二重思考」と名付けられた、ダブルバインドと酷似する洗脳手法が描かれているそうです。Wikipediaの説明によると・・・

二重思考は作中の全体主義国家オセアニアの社会を支配するエリート層(党内局員)が半永久的に権力を維持するため、住民(中間階級である党外局員ら)および自分たち自身に実践させている思考能力である。二重思考を実践していると、自分自身の現実認識を絶えずプロパガンダと合致する方向へと操作し、しかも操作したという事実をどこかで覚えている状態となる。

確かにダブルバインドと「二重思考」は酷似しています。
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門松二佐あなたにも見えたはずだ。

なんの策もないまま戦争の泥沼にはまり込んでしまった大日本帝国ではなく、無条件降伏という屈辱からはじまる戦後日本でもない。
ふたつの時代にふれたからこそ、私の脳裏にうかぶ国がある。
四海に囲まれ独立し力に満ちたその国は間違いなく我々の眼前に存在する。
それが黄金の国ジパングだ。

黄金特殊鋼さん

「TPP絶対反対、安倍政権絶対支持」の水島総
「新自由主義絶対反対、新自由主義政党自民党絶対支持」の三橋貴明。
「消費税増税絶対反対、消費税増税推進の安倍政権絶対支持」の倉山滿。

彼らの「ダブルバインド」は、どこに着地点を見出したか。

1. 水島総の例
「安倍さんはアメリカにレイプされて、いやいやTPP交渉に参加したのであります。安倍さんはレイプされた力のない女性ですから、「売女」などと安倍さんをなじるべきではないのであります。」

2. 三橋貴明の例
「泥の中をかき分けるように自民党を支持し続けよう」

3. 倉山滿の例
「木下を討て」

確かに、ダブルバインドの話法を振りかざしてきた「インチキな仕立て屋」たちは、それぞれの着地点(バランスポイント)を見出しているようです。信者脳の人たちは、

「社長は戦っている」とか
「現実政治の中を泥をかき分けるように自民党議員への説得を続ける三橋さんはさすがだ」とか
「必死で木下と戦い消費税増税を食い止めようとしてきた倉山さんは偉い」

など考えるのかもしれませんが、信者ではない立場からすると、「なにいってんの?」と考えるのが普通だと思います。

海軍新理論

 人間はダブルバンド思考停止はしない。バランスポイントを見出す作業を開始するか、それらを統合する新たな視座を求めるかのどちらかである。なぜ人間の判断力がそこまで知性を失ったかの話を強調するのかわからない。思考停止とはみらいへの展望を失うことでしかなくそれ以上でもそれ以下でもない。
 敵対するにしろ、あらたな次元に進むにしろ、そこで立ちすくんでキチガイになり、「ダブルバインド」教により、救われようとしてもかまわないが、人類はそういったあなた個人の未熟さをカバーするつもりはない。
これが長い歴史の中貫かれている、進化論の考え方だ。

都議会での暴言について

お久しぶりです。
最近典型的な「ダブルバインド」の手口を見かけますね。
都議会で下品なヤジを飛ばした鈴木章浩と、その支持者たちの事です。

「自分が早く結婚すればいいんじゃないか」
「独身らしいぞ」
「まずは自分が産めよ」
「子供を産めないのか」
「子供もいないのに」

これらの言葉の内、どれが鈴木議員で、どれが別の議員の発言か解りませんが、
どれを取っても、まともな感覚では「女性差別」「セクハラ」です。
家族親戚でもないくせに、どんな資格があって女性にこういうセリフを言える資格があるのでしょう?

なのに、ネットでは鈴木議員擁護の意見が平然とまかり通っています。

・自民党議員で……

・尖閣諸島に泳いで上陸するような「愛国的」な政治家だから

という理屈です。
「愛国的」でありさえすれば、どんな問題発言であっても許される・許すべきだという発想こそが、
管理人様の仰る典型的な「ダブルバインド」手法なのでしょう。

「鈴木議員は尖閣諸島に上陸したり石原前都知事に近い、右寄りと言われている政治家である」
「そんな鈴木議員を批判するような連中は在日チョンか、ブサヨだけである」
「従って鈴木議員=善、批判する者は全員チョンorブサヨ=悪」

こんな考えは異常であるという事が、今回の都議会でのヤジの一件でも解りますね。
少し管理人様にお考えいただきたく、久々に書き込みさせていただきました。
失礼しました。

No title

米国人が肥満の原因を理解できないのもこれが原因です。
映画監督が肥満を社会問題として憂いマクドナルドを1ヶ月食べ続けるとどうなるかを記録したドキュメンタリー映画を撮り始めると、マクドナルドは映画の公開までに『マクドナルド=健康』という印象を刷り込む巧妙な宣伝戦略を練り、映画の公開に合わせてそれをぶつける。映画『スーパーサイズ・ミー』の上映館全てで30秒間のスポットCMを入れ、映画館でこの映画を観た客全員に上映終了後に従業員がマクドナルドの袋に入った新鮮なリンゴを配る。映画の公開日にサラダのメニューをちょこっと追加し、『映画の問題提起を真剣に受け止めてマクドナルドは生まれ変わりました。健康なメニューに変えたマクドナルドにお越しください』とやった。この映画の公開後、マクドナルドの売り上げが伸びたことが知られている。

2チャンネル情報漏れ

自民党議員や東電が2チャンネルで工作していることが判明
東電関係者「放射能で死んだ人はいない」と書き込み。確か自民党の高市さんも同じ発言をしましたが、責任をとりません。民主党の時は死の町発言で自民党から責任追及されて辞任させられた。私は高市発言の背後にある傲慢な態度は許せません。
日本を取り戻すと高らかに宣言して政権を取り戻した自民党の徹底した売国ぶりに泣けてきました。ブッシュ派の安倍政権はアメリカの凋落は自分たちの凋落と同じと自覚しているのかなりふり構わず日本撲滅に邁進している行動が透けて見えてもう日本を好きなように壊せばいいとなかば投げやりなきもちにもなります。

真実を探すブログより
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-771.html

金融緩和の真の目的

金融緩和の真の目的は米国へ日本のマネーを流す事のようです。以前から日本は低金利政策で米国へ資金提供してきたのですから当然の推測でしょう。円キャリー・トレードで日本の緩和マネーが海外へ流れたことを誰も国会で質問しなかったそうです。日本のマネーが米国の不動産バブルを下支えしてきたとする説もあります。

↓の動画を参照してみてください。
http://www.youtube.com/watch?v=ZDabYQIQ4Jw

デフレ脱却とか景気回復など最初から安倍政権の目的ではないのです。景気回復が目的なら、消費税増税や軽自動車税の増税をする事は矛盾します。本当にデフレ脱却して景気回復したなら、国債の長期金利が上昇し日本は財政破綻します。一方TPPに参加した(最初から参加する予定だった)事を考えると、米国へ日本のマネーを流す事は矛盾しません。

第二の矢、公共事業・国土強靭化について。公共事業・財政出動に景気対策効果など最初からありません。ケインズの乗数効果理論は数学的に誤りである事が林有一郎、Brian Chapmanによって証明されています。

国土強靭化に投資されたマネーも結局は日本国内で回らず、米国へ流れる結果になりそうです。
円安でエネルギー価格と食料品価格が高騰した事と増税のため、日本国民は一層財布のひもを引き締め、必要な物以外は買わないようにするでしょう。預金にまわすだけです。国土強靭化は国の借金を増やすだけです。

ドイツ、フランス、イタリアは外貨準備の7割を金地金で持っています。日本はわずか3%です。量にしてドイツの4.5分の1です。日本の外貨準備の7割は米国債と推測され、米国は日本に借金を返す気はありません。日本が財政破綻したら、日本には外貨も無いので大変なことになるでしょう。食糧も資源も外貨が無ければ買えません。
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